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気象病と認知症:天候の変化が脳と心に与える影響

[2026.05.06]

雨が降る前に頭痛がする、あるいは台風が近づくと気分が落ち込むといった経験はありませんか。これらは近年気象病と呼ばれ、注目を集めています。

実は、この気象病は高齢者、特に認知症を患っている方にとっても無視できない影響を及ぼします。天候の変化がきっかけで認知症の症状が悪化したり、介護者の負担が増えたりすることがあるのです。

今回は、気象病と認知症の関係、そして家庭でできる対策について、専門的な視点から分かりやすく解説します。

気象病がこるメカニズムと自律神経の影響

私たちの体は、周囲の気圧や温度、湿度の変化に合わせて、無意識のうちに内部環境を一定に保とうとします。これをコントロールしているのが自律神経です。

気圧が急激に低下すると耳の奥にある内耳が敏感に反応し、自律神経のバランスが乱れてしまいます。

神経の状態 現れやすい症状
交感神経が優位 痛み(頭痛や関節痛など)を感じやすくなる
副交感神経が優位 だるさ、眠気、気分の落ち込みなど

認知症の方は、もともと脳の機能低下により自律神経の調節機能が弱まっていることが多く、健常者よりも天候の影響をダイレクトに受けやすい傾向にあります。

気象病によって現れる認知症の3つの変化

天候が悪化する際、認知症の方には以下のような変化が見られることがあります。これらは単なるわがままではなく、体調不良が原因かもしれません。

周辺症状(BPSD)の悪化

気圧の変化による不快感や痛みは、言葉でうまく伝えられない認知症の方にとって大きなストレスとなります。その結果、イライラや徘徊、不穏といった症状が強く出ることがあります。

中核症状の一時的な進行

脳への血流変化や自律神経の乱れにより、記憶力の低下や見当識障害(今どこにいるか、何時か分からない状態)が一時的にひどくなることがあります。

意欲の低下と昼夜逆転

低気圧の影響で活動性が下がり日中ずっと寝てしまうことで、夜間に目が冴えてしまう昼夜逆転が起こりやすくなります。

家庭で今日から実践できる気象病対策

気象病は天気のせいだから仕方ないと諦める必要はありません。予防と緩和のために、以下の手順で対策を試してみましょう。

  1. 耳の血流を良くするマッサージ
    内耳の血行を促進することで、自律神経を整えます。両耳を軽くつまんで、上下横に引っ張ったり、回したりする簡単なマッサージが効果的です。
  2. 気圧の変化を予測する
    気圧予報アプリなどを活用しましょう。事前に予測しておくだけで、介護側の心の準備ができ、余裕を持って接することができます。
  3. 室内の環境を一定に保つ
    エアコンや加湿器を使って温度と湿度を一定に保ちましょう。カーテンを閉めて外の荒天を見せないようにする工夫も、視覚的な安心感につながります。

脳神経外科医からのアドバイス:変化を記録して主治医に相談

認知症のケアにおいて大切なのは、いつ、どのような時に症状が出るかのパターンを把握することです。

もし、雨の日はいつも怒りっぽいという傾向が見えてくれば、それは性格の問題ではなく、気圧による体調不良が原因かもしれません。その場合は、主治医に相談して漢方薬を処方してもらうことで、症状が劇的に落ち着くケースもあります。

参考文献

気象病 知っておきたい気圧と体調の不規則な関係 佐藤純 著(角川ソフィア文庫)
認知症疾患診療ガイドライン2017 日本認知症学会
e-ヘルスネット 自律神経失調症 厚生労働省
Effects of weather changes on BPSD Teruso, M., et al. (Journal of Psychosomatic Research)

 

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執筆者情報

日本とドイツの医師免許を持つ脳神経外科医

市村 真也(いちむら しんや)

 

保有資格・所属学会

  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本脳卒中学会専門医
  • 脊椎脊髄外科専門医
  • 日本脊髄外科学会認定医
  • 日本がん治療認定医
  • 日本神経内視鏡学会技術認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • ドイツ医師資格
  • ドイツ脳神経外科学会正会員
  • ヨーロッパ脳神経外科学会正会員

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