ヤンドク!の手術を脳外科医療指導医が解説
④びまん性星細胞腫に対する覚醒下開頭腫瘍摘出術手術(第3話)
今回は大友先生が術者のびまん性星細胞腫に対する覚醒下開頭腫瘍摘出術手術でした。
私は手術シーンの医療指導(手術指導)の担当のために、ドラマのストーリーや大友先生のキャラ設定には監修していません。
びまん性星細胞腫とは?
びまん性星細胞腫は、脳の星細胞(グリア細胞)から発生する浸潤性脳腫瘍(神経膠腫)です。
WHO分類でグレード2に相当し、低悪性度(悪性腫瘍の中では良性)ですが、長期的には悪性転化(グレード3や4へ進行)する可能性があります。
主に30〜40代の若年成人に多く、ゆっくりと増大していきます。
脳実質内へしみ込むように(びまん性)に浸潤する傾向があるため、MRI画像よりも実際は広範囲に存在し、完全な手術摘出が難しいことが多い腫瘍です。
てんかんや運動障害(麻痺や脱力など)、感覚障害、言語障害(失語症、構音障害)、視覚変化、人格変化などの症状が
腫瘍が発生する場所に伴って出現します。頭痛や吐き気なども伴います。
治療は手術で可能な限り摘出を行います。全摘出が目標としますが、周りの脳組織に浸潤しているため、すべてを取り切ることは難しい事が多いです。

びまん性星細胞腫のMRI画像
覚醒下開頭腫瘍摘出術手術
がん治療認定医という立場から、この手術を解説いたします。
覚醒下開頭腫瘍摘出術は、運動野や言語野など脳の重要な機能のある領域の近くにある腫瘍に対し、患者を一時的に麻酔から覚ましたした状態で、会話や手足の運動機能をリアルタイムに確認しながら安全に腫瘍を最大限に摘出する手術法です。
今回のケースではブローカ野(運動性言語中枢)や ウェルニッケ野(感覚性言語中枢)といった言語機能をつかさどる領域を温存することが目的です。
腫瘍の位置によっては運動領域をターゲットにして同定することもあります。
手術は全身麻酔で行います、頭蓋骨を切って脳を広く露出します。
開頭が終わったら麻酔の量を減らしたり中止して、全身麻酔の際に気道に挿入していた挿管チューブを抜き(抜管)、患者さんを半分麻酔から覚ました状態にします。これが覚醒下と呼ばれる所以です。
第2話でも出てきたナビゲーションを使って腫瘍の位置を同定します。ナビゲーションで位置を確認し、電気で刺激しながら患者さんと会話をして、言語機能や運動機能に問題があるかどうかをリアルタイムで確認し、言語中枢を同定します。
この作業を脳機能マッピングと言います。
マッピングが終わり、言語中枢に問題ない確実に安全な領域から腫瘍をできる限り摘出します。腫瘍摘出中も、症状の確認のため話しかけたり、手足を動かすようにお願いすることがあります。

脳機能マッピングのイメージ
覚醒下手術は患者さんの顔が見えながら開頭するという脳神経外科医の私でもぎょっとする光景なので術中の写真はお見せすることはここでは控えます。


