高脂血症/脂質異常症
血管は例えるならば体中をめぐる土管のようなものです。そこに長年にわたるコレステロールという名のヘドが溜まります。このヘドが血管内に溜まってゆくと、いずれ動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中などで突然倒れるという最悪の事態を招きます。
血液中に含まれるLDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪の増加に加え、HDLコレステロール(善玉)が減少する代謝異常が認められるため、高脂血症は2007年より脂質異常症という名称に改められるようになりました。
高脂血症(脂質異常症)は高血圧や糖尿病と並び、生活習慣病の代表格として有名です。食事内容の見直しや適度な運動を取り入れるなどといった普段からの生活習慣の改善を図ることが課題となるだけでなく、適切な薬物療法による早期の治療が必要となります。
コレステロール値は採血によって判明します
高脂血症(脂質異常症)は高血圧や糖尿病と同じく自覚症状が乏しいため、採血による詳細な分析が必要となります。診断基準としては空腹時の血液中に含まれるLDLコレステロールが140㎎/dl以上(高LDLコレステロール血症)、HDLコレステロールが40㎎/dl未満(低HDLコレステロール血症)、中性脂肪が150㎎/dl以上(高中性脂肪血症)のいずれかである場合に高脂血症(脂質異常症)と診断されます。
定期的な数値の確認をあわせて行っていくことが重要であり、さらに合併症の有無を正しく精査する必要があります。
高脂血症(脂質異常症)の合併症としてよく見られる疾患例
動脈硬化
脳に酸素や栄養素を送る重要な動脈部が血行不良や詰まりを起こすことで神経細胞が死滅します。その結果、全身に麻痺や感覚障害、重大な後遺症を引き起こすこととなります。
当然のことながら命に直結する重大な事態を招きやすく、早期に適切な治療を開始できなければ死に至る患者さんが多くみられます。
特に頸動脈分岐部や中大脳動脈に狭窄や閉塞を起こすことが多いので、頸動脈エコーや頭部MRI,MRAにて定期的な検査が必要になります。
冠動脈疾患
心筋梗塞による突然死が起きる可能性が高い大変恐ろしい病気です。
糖尿病・慢性腎臓病・脳梗塞・抹消動脈疾患のいずれかの疾患をあわせ持った場合には高い致死率となるため厳重な警戒が必要となります。
末梢動脈疾患
手足への動脈に閉塞や狭窄が起きる病気で、しびれなどさまざまな障害が起きるようになります。
進行するほどに歩行困難や壊死に至ることもあります。
痩せていれば大丈夫と言うことはありません!
「痩せているから高脂血症は関係ない」というわけでは決してありません。ボーダーライン上にいる方は実はかなり多いです。
また、中高年の女性などはホルモンの影響によってコレステロール数値が異常に上昇するケースもよくみられます。
甲状腺による影響だけでなく、年齢とともにコレステロール値が純粋に上昇することは日常的にみられます。
男女による性差も一切ありません。
「太っている」「痩せている」といったような単純な指標では判別できない複雑な病気だからこそ誰もが警戒すべき病であり、詳細な検査を加える必要があるのです。
当院の治療方針
血液中のコレステロール値を下げるためには、まずは食事療法や運動療法を含む基本的な生活習慣の改善がテーマとなります。
その上で薬物治療を行います。
当院では血管内皮(血管の内側の皮膚)に優しいスタチン製剤を使用しております。早期に治療を開始することができれば、血管内部をコレステロールが溜まりにくい状態へと促すことができ、それにより脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすリスクを低下させることができます。
また、天然の青魚から抽出されたEPAやDHA成分を豊富に含む体に優しい安心・安全な薬も使用いたしております。スタチン製剤と同様に血管内にコレステロールが滞留しづらく、コレステロール値を下げる効果が期待されています。
すでに溜まってしまった血管内においては手術やカテーテル治療が必要となります。
ご自分の状態を正しく理解し真っ直ぐに治療と向きあう姿勢が大切です
高脂血症(脂質異常症)は代表的な生活習慣病のひとつです。
自覚症状がないからこそ、普段の食事内容や運動不足、ご自身を取り巻く環境やストレスについて今一度丁寧に見つめ直し、ご自身のおかれている状況をまずは正しく理解することから改善の一歩は始まります。
食事療法・運動療法による生活スタイルの改善を無理のない範囲で少しずつ図りながらも、適切な治療に真摯に向きあう姿勢が肝心となります。
過食を控えて標準体重の維持に努めることや魚類や大豆製品の摂取を意識すること、アルコールの過剰摂取を控えたり有酸素運動を積極的に行うことなどは日常生活の中にも取り入れやすい工夫のひとつかと思います。
薬物治療だけに頼ることなく、ぜひ普段からの適度な節制に心がけていただきたいと思います。