生活習慣病
「生活習慣病」とは偏った食生活や運動不足、過度な喫煙や飲酒などといった生活習慣の乱れに起因して発症する疾患群の総称です。以前は「成人病」とも呼ばれていましたが、時代とともに研究が進み、加齢的な問題だけでなく成人以前より脈々と続くその方の生活習慣そのものが主な要因となっていることが明らかにされてきました。
その結果、1996年頃から名称も「生活習慣病」と改められるようになりました。
「突然倒れた」のではなく、「長年にわたって身体がむしばまれてきた結果」であるという怖い現実
脳外科を特に専門としている当院においても、日々の診療現場において救急搬送されていらっしゃる患者さんの多くはこの生活習慣病が認められるケースが圧倒的に多いです。例えば脳卒中や脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、狭心症、心筋梗塞、心不全などといった病気の発症にはすべてこの生活習慣病が深く関わっています。
いずれも脳や心臓といったきわめて重要な部位に深刻なダメージをもたらすものであり、命に直接的に関わる重大な事態に至ります。
ご本人やご家族は突然起きたことのように思われがちですが、実は長年にわたって身体がむしばまれてきた結果でもあります。
そのことがわかると皆さん一様に驚かれますが、生命に関わる重大な危険を回避するためにはご自身の身体の異変に早期に気づき、一刻も早く適切な治療を開始することが何よりも重要となります。
生活習慣病がもたらす代表的な疾患例
ご本人が異常に気づいていないケースも実は多い
詳細な検査を加えて初めてご自身の身体の異常に気づかれる患者さんも実際の診療現場では多く見受けられます。
生活習慣病は日常的な不摂生を原因とする病気です。
それゆえご本人だけの視点では気づきにくく、なかなか効果的な改善に至らないことが多くあります。
治療においてはご家族や周りの方々のサポートがカギとなる病気であることもぜひご理解いただきたいと思います。
原因のひとつに挙げられる食事の欧米化
生活習慣病を招く要因のひとつには食事の欧米化が挙げられます。
炭水化物の摂取量の減少や高脂肪の動物性食品の増加などは現代の食卓を見れば顕著です。
食事はまさに私たちの命をつなぐ源です。ぜひ正しい知識と理解を持って、積極的に見直してみる機会を設けていただきたいと思います。
生活習慣病は初期の段階ほど自覚症状がありません
生活習慣病はいずれも初期の段階ほど自覚症状がないのが特徴的です。中でも高血圧や糖尿病、高脂血症といった生活習慣病は別名「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と呼ばれています。
長期にわたって少しずつ動脈硬化を進行させ、身体のさまざまな場所に深刻なダメージを与えてゆきます。放置し続ければいずれ確実に死が訪れます。
何らかの自覚症状を感じ始めた頃にはすでに体内では甚大な損傷が起きており、かなり進行した状態と考えられます。
次々と引き起こされてゆく合併症の危険
生活習慣病の真の恐ろしさは、重篤な合併症を次々と引き起こす点にあります。
高血圧症・糖尿病・高脂血症などといった病気はひとつひとつが独立した病気でありながらも、ひとつ発症すれば次々とドミノ倒しのように起きる危険が高まります。
中でも発症の引き金となるのは肥満です。メタボリックシンドロームと呼ばれる内臓脂肪型の肥満の方は血圧・血糖値・コレステロール値などの数値に異常がみられやすく、合併症を引き起こすリスクがさらに高まるため警戒が必要です。
定期的な検査機会を設けることでリスクは下げられます
生活習慣病の有無は、血液検査やエコーなどをはじめとする基本的な検査項目の中で簡単に確かめることができます。
頸動脈エコー
心臓から脳へ血液を送る頸動脈をエコーで観察し、血栓や狭窄の有無、動脈硬化の進行度合いなどを詳しく確認することができます。痛みもなく、検査自体は数分で終了します。
心臓エコ―検査
高周波の超音波を利用して、心臓の形態的な異常の有無やリアルタイムに動く心臓の様子を詳しく観察することができます。
被ばくの心配もなく、妊婦さんや小さなお子さんも安心してお受けいただけます。
近年では高い効果が期待される薬が続々と開発されてきています
生活習慣病の改善においては、食生活や運動習慣の見直しが大前提となることは言うまでもありません。
しかしながらそれに加えて必要となる薬物療法なども、近年では目覚ましい進化を遂げています。手軽に用いることのできる内服薬においても、高いエビデンス(医学的根拠)に基づいた効果が期待される時代となりました。
まずは正しく病状を精査し、定期的にきちんと診察にお越しいただくことさえできればある程度の改善を見込むことは十分可能です。ぜひ一人でも多くの患者さんに早期に診察にお越しいただき、適切な治療を開始することができれば幸いです。
生活習慣病はご自身の命を直接的に左右する重大な病気です
毎年、日本人における死因のTOP3は「がん」「脳血管疾患」「心疾患」と言われます。
いずれも生活習慣病から起因するものであり、高い確率で命を奪う病気です。
生活習慣病はその発症のメカニズムが複雑であることに加え、長期間にわたるその方の日々の積み重ねによって起きる病気です。
一昔前ではさまざまな改善策が模索されていたものの、今では数多くの高い効果が見込まれる薬の開発もすすみ、早期の段階であれば治療法も確立されてきました。
定期的に詳細な検査を行う機会が得られれば、さらにそのリスクは下げられます。
年に一度の健康診断など、ご自身の健康状態を確認する機会をぜひ積極的に設けていただければと思います。一方で、今まさに脳や生活習慣病に関する不安をお抱えの場合には、重大な危機が差し迫っている可能性が考えられます。
何よりも早期に一度、当院の診察室にお越しいただきたいと切に願います。